乳がん治療について
ご投稿有難うございます。
乳腺診療ガイドラインには『ほぼ全例に軽度の皮膚炎が見られるが、ほかの有事事象の頻度は低く許容範囲内であるので、乳癌術後の放射線治療は強く勧められる。』と記載されています。
乳房温存手術後の放射線治療では殆どの患者様において急性期に軽度の放射線皮膚炎が見られ、しばらくは色素沈着が残ります。全身倦怠感を訴えることもあります。また乳房の硬さの増加、発汗や皮脂分泌の低下、乳房痛も照射後2年間は殆どは見られることが多いが、自制内です。放射線肺臓炎の頻度は0.1%です。順次より化学療法を併用する場合や鎖骨上窩を含むような広い照射野の際に放射線肺臓炎の発生頻度はやや増加します。晩期有事事象についてみると、肋骨骨折は1.8%、心膜炎は0.4%さらに組織壊死は0.18%である。上肢浮腫は腋窩郭清の程度や照射範囲に左右されます。また乳房温存療法後の整容性についても、化学療法を同時に併用すると悪影響を及ぼすとしています。全体として皮膚炎以外の有事事象の頻度は低く、許容範囲内です。
また『全乳房照射が整容性に与える影響は軽度であり、乳房温存療法における放射線治療が勧められる。ブースト照射は、長期には整容性を下げる可能性があるが、その頻度は低い。』と記載されています。
多くのランダム化試験で放射線治療は整容性に与える影響は軽度と報告されています。
術後放射線療法は、原発性乳癌に対して手術後に再発予防の為に行う放射線治療です。1)乳腺部分切除後の乳房内再発予防のための残存乳房への照射と2)リンパ節転移4つ以上ある進行癌症例に対しての胸壁の局所制御のための照射があり、この二つの有用性は証明されています。温存術後、切除断端陽性などの局所再発の危険がある場合にはブースト照射を加えることもあります。術後化学療法も使用しなければならない際などに、いつ照射を始めるべきかなど不明な点も多いです。
温存手術後の照射は全乳房を含める事が推奨されています。腋窩リンパ節領域の一部はこれに含まれます。しかし、腋窩リンパ節郭清が行われた場合は積極的にターゲットに含む必要はありません。腋窩郭清を施行しない場合、腋窩照射に対する是非についてはまだ一定の見解はありません。腋窩リンパ節転移4個以上陽性例においては鎖骨上窩リンパ節領域への照射が推奨されています。全乳房照射の線量・分割については、総線量45〜50.4Gy/1回線量1.8〜2.0Gy/4.5〜5.5週が経験的に行われています。小分割照射も許容されています。実際には50Gy/25回/5週、50.4Gy/28回/5.5週が最も行われています。
非浸潤性乳管癌においては、照射の有用性を検証する無作為化比較試験は4つあり、放射線治療の有用性が示されています。浸潤癌での再発率は16.8%から7.7%に下げますが、非浸潤性乳管癌でも再発率は14.6%から8.0%に低下します。放射線照射は局所再発を有意に低下させます。
以上より放射線治療を行わない事は標準治療となりません。エビデンスに基づいて強く推奨されている放射線治療をこの病院だけ行わないのは問題です。放射線治療は 乳癌診療ガイドラインには『術後化学療法を施行しない症例では、術後8週間以内の放射線治療開始が勧められる。』と記載されています。術後化学療法を施行しない例では、放射線治療開始の推奨時期を明確には示したいが、術後8週を超えると局所再発率、死亡率ともに増加する可能性があり、8週以内に開始すること望ましいと考えられています。放射線治療を行わない事は局所再発率や死亡率上昇を起こします。至急他院でセカンドオピニオンをされ、納得行く治療をお受けになる事をお勧め致します。
地方では残念ながら平然と標準治療を行われていない事があります。患者様自身が知識がないと不利益を得る事があります。日本乳癌学会が金原出版株式会社から出版されている『患者さまのための乳癌診療ガイドライン』があります。これは最低購入され、一読される事は大切です。
早急なご回答をありがとうございました。
患者としても知識を持って、積極的に治療に臨む姿勢は大切ですね。
さっそく、セカンドオピニオンを受け、納得のいく治療を進めていきたいと思います。
ありがとうございました。
御丁寧なお返事有難うございます。
先日左胸の乳がんの乳房円状部分切除術を受けました。
病理検査の結果、浸潤がん(硬がん)で高度ホルモン反応性、腫瘍は15ミリ、切除部分内に、もうひとつ、術前検査では見つからなかったごく小さなガン細胞が確認されましたが、二つとも取りきれたそうです。グレードは2、脈管浸潤はなく、リンパ節転移はありませんでした。
治療方針として、ホルモン療法のみすすめられたのですが、温存術を受けた患者は放射線治療をするのが一般的であると聞きます。
主治医の説明によると、放射線は良い細胞までこわすので、この病院では放射線治療をすすめないとのことです。
再発のリスクを考えれば、放射線治療は受けたほうがよいのではないか、と不安に思います。術前に見つからなかったガンがもうひとつあったことも、この不安を煽ります。
現在の乳がん治療では、このような状況において、放射線治療をすすめないのは一般的なのでしょうか。