乳腺エコーでの嚢胞診断について
ご投稿有難うございます。
のう胞は乳腺症の一つとしてしばしば認められます。組織学的には乳管の嚢状の拡張からなる病変です。1cm位になると触診でも触れます。好発年齢は35〜45歳で、乳腺疾患の約30〜50%程度を占めます。多発する方が15%居ます。
のう胞内には黄色や黄白色の液状成分認めます。血液の貯留の場合もありますが、その際にはのう胞内乳頭腫(良性)やのう胞内乳癌が疑われる所見です。その際は吸引細胞診を施行し、確定診断が出ない場合は、マンモトーム生検や外科生検へと進みます。
この他に鑑別を要する物は、充実腺管癌、粘液癌、髄様癌があり、誤診されることがあります。特に、マンモグラフィーでは鑑別困難な為、乳腺エコー検査は必須です。確率は低いですが、悪性リンパ腫と間違われることもあります。
緊満感や疼痛がある場合は、穿刺吸引により症状は軽減致します。1〜2回再吸引を施行すると消失する事が多いです。
多くののう胞はエコー画像で良性と判断出来、年に1回の乳がん検診程度で問題はありません。但し、上記の鑑別を要するものを判断ミスされることがしばしばあります。エコー検査機器は性能に医療機関で差が激しく、画質の悪い物では誤診を誘発致しますので、注意をされるべきです。
ただ、乳腺外科の診断ではないので、婦人科の診断では信憑性がないので、判断はご自身でお願い致します。
また、 婦人科で経口避妊薬(ピル)は乳癌には関係ないと言われたという方が未だにいらっしゃいます。これは非常に間違った見解なので正しい知識を理解される必要があります。乳腺診療ガイドライン(2008年版)には『経口避妊薬使用は乳癌のリスクを増加される可能性がある。』と明記されています。
系統立った文献検索でメタアナリシス3件の報告からいずれも相対リスク約1.2と言でリスク増加が認められています。経口避妊薬は乳癌発病のリスクを増加させるという結論とされ、相対リスク1.1〜1.6と言う事です。
経口避妊薬の中止した場合は、中止後10年以上経過すればリスクの増加は認められなくなるという報告もあるが、中止後5年以上経過しても使用期間によるリスク増加の影響は残るとする報告もあります。初回妊娠より前の使用でリスクが上昇するという報告もあります。また、日本人も含めアジア系住人がアメリカに移住した場合に乳癌発病リスク増加が認めており、同時に経口避妊薬の使用も増加しています。実際、当院でもアメリカでピル使用歴があり、帰国後の検診で乳癌と診断された方がいらしゃいます。実際診療の中もピル使用者やピル使用経験の方の乳癌は多いと思われます。低用量ピルだから問題ないのではありません。ピルはエストロゲンとプロゲステロンの混合剤で共に乳癌を発生の原因になります。このガイドラインがある以上は、正統派の乳腺診療を行う医師はピルを安易にピルの使用を認める事はありません。
但し、ピル使用に関してはメリットもあり、メリットとこのようなデメリットの差を考慮してどちらが利益があるかを選択する必要があると思います。また、ピル使用の際は、必須としてマンモグラフィーと乳腺エコー併用の乳がん検診を年に1回は受ける事が必要です。
丁寧なご返答、どうもありがとうございます。
のう胞の好発年齢35〜45歳というのと、自分の現在の年齢23歳というのとを比べていろいろ不安にもなるのですが、こまめに検診を受けていこうと思います。
また、書いてくださったピルと乳がんリスク増加との相関関係ですが、あらためて数字でみるとぎょっとするものがありますね。
私は生理がひどく、日常生活に支障をきたすほどだったので、デメリットとメリットを比べたうえでピルの服用を決断しました。処方されたのも、現在かかっているのも婦人科ですが、ピルはデメリット(もちろんこの説明もありました)よりメリットを強調されたように思います。乳腺専門医と婦人科医でそのようにスタンスの違いがあるというのに驚きましたが、同時に、今後の乳がん検診はきちんとした乳腺専門医の病院で受けなくてはならないなと思いました。
近いうちに貴院の乳がん検診を受けてみたいと思います。
どうもありがとうございました。検診の際はよろしくお願いいたします。
御丁寧なお返事有難うございます。
突然失礼いたします。
23歳の女性、未婚です。
現在生理の量の調節のためピルを5カ月服用しております。
ピルを飲んでいるため、ピルを処方してもらっている婦人科で乳腺エコーを受けたところ、左胸に3mmの「嚢胞疑い」とされるものがある、との結果が出ました。
エコーの写真を見せていただくと、黒くて丸い物体が映っていました。
お医者様には、これはガンなどの悪いものではないし、これからも年に1回エコーを受けていけば問題ない、と言われました。
しかしインターネット等で調べると、嚢胞だと思っていたがガンになったとか、嚢胞は30〜40代に多いという情報があり、20代の自分としては非常に不安です。
年一回のエコーで十分なのでしょうか。