非浸潤癌全摘手術後のホルモン療法は?
ご投稿有難うございます。
もし温存なら DCISの乳房温存手術後に,タモキシフェン(20mg/日,5年間)を追加することが,DCISと浸潤癌を合わせた乳癌イベント発生率を下げるかを検証したランダム化比較試験が2件報告されている。
NSABP B-24:DCIS患者1,804人が,外科療法+放射線療法(50Gy)+プラセボ群と外科療法+放射線療法+タモキシフェン群にランダム化割り付けされた。患者背景は,50歳以上が66%,腫瘍径2cm以下が95%,切除断端陽性が16%であった。
5年間の乳癌イベント累積発生率は,タモキシフェン群8.2%とプラセボ群13.4%で,タモキシフェン群が有意に少なかった。温存乳房内再発は,タモキシフェン群で有意に約30%減少した。内訳は非浸潤癌の発生率はほぼ同じで,浸潤癌の発生率が有意に少なかった。また,対側乳癌の発生がタモキシフェン群で約半数と有意に少なかった。5年生存率は両群ともに97%で差を認めなかった。サブグループ解析では,ホルモン受容体陽性例,50歳未満,comedo壊死を伴う例,切除断端陽性例でタモキシフェンはより効果的であった。ER陽性例での乳癌イベントの相対リスクは,プラセボ群に対して0.41と有意に低下していた。一方,ER陰性例では相対リスク0.8(p=0.51)であり,タモキシフェンの有用性が浸潤癌同様,ホルモン受容体陽性例に限定される可能性が示唆された。
有害事象では,ほてり,腟分泌,子宮内膜癌,深部静脈血栓症がタモキシフェンで多くみられた。
UKCCCR:2×2要因実験デザインを用いて,DCIS患者1,701人が乳房温存手術後に,放射線療法(50Gy)+タモキシフェン,放射線療法単独,タモキシフェン単独,手術後無治療の4群にランダム化割り付けされた。患者背景として,50歳以上が90%以上,断端は全例で陰性であった。
当初の報告(追跡期間中央値4.4年)では,タモキシフェン投与群で浸潤癌と非浸潤癌を合わせた温存乳房内再発率の減少は認められなかったが,2009年の報告(追跡期間中央値12.7年)ではハザード比が0.78(95%CI:0.62-0.99)と減少を認めた。対側乳癌の発生は約半数に抑えられていた。乳癌総イベント発生率は,タモキシフェン投与群のハザード比が0.71(95%CI:0.58-0.88)と減少していた。OSには差を認めなかった。
放射線療法群は,非治療群と比較して温存乳房内再発を約1/3に抑制していた。
以上よりホルモン療法となります。
しかし、全摘なので対側の予防効果の問題になると、効果があります。
また、判断基準としてオンコタイプDXという検査も最近は非浸潤癌でも判断基準に効果があると言われているので、高額ですが、このような検査でホルモン療法での効果を出し、判断材料とされるのも一つかと思います。
ご丁寧なご回答ありがとうございます。大変参考になりました。ホルモン療法の効果も勘案しながら決断していきたいと思います。
ご丁寧なお返事有難うございます。
今年8月、右乳房乳がん全摘手術をし、先日術後病理検査が出ました。結果は以下の通りです。
非浸潤性乳がん (浸潤がんの所見なし)
範囲:5.5x1.5㎝
グレード1
ホルモンレセプターER+ (90%)、PgR+(90%)
HER2 (2+)
ステージ0期
リンパ節:センチネルリンパ節のがん転移なし(0/4)
断端 陰性
主治医から今後の治療について、「再発率は1%程と低く、浸潤がんの所見もないから、補助療法は絶対的に必須ではない。ただ、病巣が広範囲なため、検査で見つからなかったところにガンが潜んでいるかもしれないので、出来る限り再発率を下げたいのならホルモン療法を受けておくのも良いかもしれない。」と言われ、ホルモン療法を受けるか否かの選択を委ねられました。
セカンドオピニオンで別の医師に見解を伺ったところ、「非浸潤がんは基本的には術後は無治療だから、ホルモン療法を受けなければならないことはない。元々再発率が低いところで、ホルモン療法を受けて副作用で辛い思いをしてもリスクは半分程度にしか下がらないなら、あまりベネフィットは大きくない。それよりも、日々の食事管理やストレスをためずQOLを高め、また大いに生活を楽しんで笑ってナチュラルキラー細胞を増やすことも、予防治療として大切なことだ。」と言われました。
私の正直な気持ちとしては、セカンドオピニオンに従いたいです。必要がないのであればホルモン療法は受けたくありません。副作用によりQOLが下がることで免疫力が低下してしまっては治療の効果がかえって裏目に出てしまうのではないかとも思います。しかし一方で、主治医に言われた病巣が広範囲であることから、再発の不安や左乳房のガンのリスクを考えると、やはりホルモン療法を受けたほうがいいのかな・・・とも思います。
ホルモン治療すべきか、それともこの病理の結果でそこまでの治療は必要ないのか、アドバイスお願いします。